アセクシャルの気ままな感想日記

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色恋ネタがないエンタメは売れないのか?

最近、NETFLIXでテレビドラマの『ウェンズデー』を見直してきました。配信されたばかりの頃は大ヒットで、早くもシーズン2が確定されましたね。それを見直してから、色恋ネタがないなら、本当に売れないものなのかを、改めて考えるようになりました。

 

よくホラー映画を見るんですが、欧米のホラー映画の中ではいきなりR18シーンになることもあり、「え?犯人・幽霊・化け物がいるけど?」それでも気にせず進めるんですが、「色恋がないと売れないのか」をよく考えていました。

 

アセクシャル自認ですが、アロマンティックじゃないんですが、よく色恋は人間にとっては自然ですと一緒に変に扱われるので、ここで少し一緒にしています。

 

私は元ネタのアダムズファミリーが好きで、1991年と1993年のアダムズ・ファミリーの映画版は何度でも見返しています。なので、思春期真っ最中のウェンズデーがどう現実社会と向き合うのか、すごく気になりました。

 

ウェンズデーが超能力者のための学園に入学してすぐ謎の怪物による殺人事件を目撃し、それを調査する物語です。

 

個人的には、元ネタのキャラクター、ウェンズデーは以前の作品では、やはり子供なので、恋愛ネタがほぼありません(1993映画版では冗談気味で初恋なのか?というネタはあります)。

1993年の映画のとあるシーンがすごく好きなんです。

モーティシア(母)「ウェンズデーは今、考えられることが一つしかない特別なお年ごろなんですよ」

金髪の女の子の母親「(男の子との)恋愛でしょう?」

ウェンズデー「殺人」

 

このシーンを何度見ても笑っちゃいます。こうやって自分だけを頼りとする賢い女の子がかっこよくて好きなんです。恋愛に興味を持たない思春期頃の女の子のキャラクターは映画、ドラマ、漫画は少ないので、とても新鮮でした。

問題点:無理やり押し付けた恋愛ネタ

なのに、この『ウェンズデー』のテレビドラマでは、無理やり色恋展開を押し付けた感じがします。個人的には、ウェンズデー・アダムズには、色恋路線が全然必要ないと思うし、つまらないと思います。侮辱かとすら思いました。

 

元ネタとの違いがあっても、ある程度は許されるものだと思います。漫画などの二次創作でも、ペアリングはファンが自由に想像してもいいと思うし、公式カップルがあっても別のペアリングを想像してもいいと思います。キャラクター本人の性格、本質が保たれていれば、その二次創作を受け入れる人はきっと一定数いるはずです。(ない場合では、読む人、買う人がいないだけで、とくに害はありません)でも、この場合はファンの一人が作った二次創作ではなく、プロばかりの制作陣が作った商業用のエンタメです。

 

個人的にウェンズデーの恋愛路線はいらない意見を置いといて、物語的にうまく書かれていないんですよ。もうちょっと、まともな書いていれば、私ももう少し受け入れやすくなったかもしれません。ウェンズデーは明らかにタイラーとゼイヴィアに興味がなく、調査に役立つし便利だからと声をかけていました(ほかの知り合いのように)。それはどう見ても、恋愛相手として興味があると誤解するはずがないと思います。なのに、その二人な彼女にべたぼれで利用されつづけます。

 

それ以外に、二人はキャラクターとしての描写が弱く、ウェンズデーましではキャラクターの一人として成立しないんです。犯人が明かされるまで、タイラーも、ゼイヴィアも、「ウェンズデーに惚れている男の子」以外は、ただ「カフェでバイトしてる人」と「絵を描く人」という印象しかありません。性格すら固まってない登場人物なんです。「恋愛ネタのためのキャラクター」として存在しているからです。

 

このせいもあって、誰が犯人か、関係人物の闇やその謎を明かす時間が少なくなった気がします。ビアンカのお母さんがセイレーンの力で一般人をカルト教団に入会させている話をもっと見たかったです。それに、やはりタイラーとゼイヴィアが登場人物として性格すら固まっていないから、恋愛シーンとされるべきシーンも二人の相性が悪く(ないというべきか?)つまらなくて飛ばしてました。

「色恋ネタは売れる」

ウェンズデー・アダムズの本質や性格に似合っていなくても、恋愛ネタがドラマに無理やり入れられたのは、間違いなく「思春期だから恋愛するもの」、「青春ドラマにはれない不可欠」と、一番大事なのが「色恋ネタは売れる」だからですね。役者や芸能界の人でも、色恋スキャンダルも「エンタメ」になってますからね。

 

恋愛や色情が人気でとんでもなく売れることは間違いなく事実です。ドラマ、漫画や映画などでも、名作とされるものの多くは恋愛テーマがありますし、それをうまく演じた俳優さんたちも大人気になります。世界中のどの国でもR18のコンテンツまたは行為自体を高くの金を払っても欲しい人はいっぱいいますからね。

 

色恋に個人的な経験があり、幸せになったり苦しくなったりする人が多いため、「誰でも共感できるもの」の一つとされています。でも、アセクシャルやアロマンティックの方には、大した興味はありません。アセクシャルやアロマンティックの方でも、色恋ネタやR18のコンテンツを楽しむ人も少なくないんですが、個人的には「誰でも必ずしも経験するごく自然なもの」として描写されたり、どの作品でも色恋ネタがあるとちょっと嫌になります。やはり、好きなキャラクターたちが幸せになるところを見届けたいものですからね。でも、『ウェンズデー』テレビドラマのように無理やり押し付けた場合はいやになります。

 

このテレビドラマ以外でも、そのキャラの成長、本人が望んでいるキャリアや夢にそぐわないのに恋愛ネタを押し付けられるのを見ると、やっぱりがっかりします。個人的に、少年漫画はとくにそうです。元から恋愛が物語の一部とされておらず、ただどこの一言や二言のセリフで「片思いしてます」が設定とされ、最終回で「結婚して子供産みました」で終わる少年漫画はとんでもなく失望しちゃいます。『ナルト』や人生を大きく影響した『ブリーチ』もそうです。「成長するとよく結婚して子供産むものだから」と言えども、忍者や死神が存在する面白い世界ならもっともっと面白い最終回を迎えるべきでしょう、と思うんですよ。

 

色恋ネタがなくても売れる:『ONE PIECE』

色恋ネタが主でなくても売れているエンタメといえば、ワンピースを思い浮かびます。

 

「ワンピースは色恋ネタがあるよ!何言ってるの?」というでしょう。

 

ありますよね。でも、それは主な登場人物や麦わらの一味がひとつなぎの大秘宝にたどり着く過程を影響しないものです。ボア・ハンコックがルフィへの片思いはルフィに全然届いていないし、ルフィは色恋に全く興味がなく、(そもそも理解していなさそう)冒険やワンピースしか考えていない人です。それに、ボア・ハンコック以外にも、色恋ネタが冗談とされるか、またはマイナーな登場人物の物語にしか直接影響しないものです。ボア・ハンコック、ナミ、ロビンは美女としてファンにアピールしてることは否めませんが、また、それがメインである冒険の物語に影響していません。

 

20年以上徐々に解き明かされる『ONE PIECE』の漫画の最大な魅力の一つであるその謎や冒険から焦点を逸らしたら、不満を感じるファンも多くいるはずです。超能力や千年の歴史や正義とはなんなのかを語る冒険の物語、『ONE PIECE』が「結婚して子供産みました」で最終回を迎えたら大炎上すると断言してもいいと思います。

 

尾田先生はどこかで、「ワンピースに恋愛ネタは入れない、少年漫画はそんなのいらない」とおしゃった気がします。尾田先生がいい物語の構成要素を理解しているので、その言葉を信じています。

 

かといって、ワンピースの面白さや尾田先生ほどうまく物語を書ける人は少ないので、色恋ネタがなくても売れる例としてはあまりよくない気がします。それ以外ですと、純粋に文学かアートまで到達できるほどのいいエンタメじゃないと、難しい気がします。色恋ネタで売るのは才能がないからとは言っていません。あくまでエンタメは見ている人たちが共感できるものや、需要に応えなければならないのですから。制作陣が食っていけるためにしているのなら、悪くは言いません。ただ、それを求める人たち、共感できる人達が大多数なので「売れる」のです。

かといって、無理やり色恋ネタを入れても、作品のクオリティが下がるだけだと思います。

 

色恋以外にも面白い物語がある

でも、英語圏ではとくに、最近は色恋ネタ、またはそういった展開にならないエンタメを求める声が多くなってきてます。もっと、面白い物語があるんじゃないか、と思ってますから。アセクシャルの自分にとって、そしてアロマンティックの方にとっても、みんな色恋ネタが好まないわけじゃないんですが、ただ、ほぼどのエンタメ作品にでも押し付けられているので、少々うんざりしてしまいます。

 

また原点である『ウェンズデー』に戻ると、元ネタのアダムズ・ファミリーは「普通」の概念をからかう作品です。不幸なものや邪悪な物事を愛する一家全員は「怖い」「おかしい」「化け物」扱いされますが、それでもいたって普通にお互いを愛し合う仲がとてもいい家族なんです。「普通だから」、「みんながやってるから」、「これが主流だから」といって必ずしもいいものではないということですね。

 

『ナルト』や『ブリーチ』でも、色恋ネタ抜きでもやはり面白いんです。面白い歴史事件は色恋がなくても面白いものです。リラックマの日常は色恋ネタがないんですが、面白いです。人が成長していく物語も面白いものです。

 

エンタメ作品では色恋ネタが浸透している問題を言うと、正直それをずっとみていると、恋愛、性行為、結婚、子供の出産が人として「自然」と思わせてしまうことです。周りの人がやってるから、エンタメでよく出てくるから「普通なことだから私もそれをしないといけない」と思い込み、のちに自分だけでなく他人を難しい事情に巻き込んでしまうことになります。「産まなければよかった」と言われた子供は、一生それを覚えてしまいます。この「普通」以外な道もあります。それも、エンタメでは反映してほしいものですが、色恋は売れるからと、あまり期待できそうにない気がします。